少し前までは暮しの中に当たり前にあった道具に、心惹かれることがある。たとえば、藁でていねいに編まれた鍋敷きとか、シンプルなブリキのちり取り。たとえば、蔓でしっかりと形作られたしなやかな風合いの籠。その実用性ももちろんのこと、手もとに置いてそっと眺めていたい、温かな手仕事ならではの魅力もある。
同じように、そんな魅力を感じるものが、昔ながらの食品。派手さはないけれどそこには確かに素朴な味わい深さがあって、知らなかった時代をどこか追体験できるような不思議な懐かしさもある。
どこにでも在りそうなもの。いつでも手に入りそうなもの。だけど実は、そこにしかないもの。手にするのは、だんだんむずかしくなってきているもの。静かな輝きを持ったそれらのものとの出会いによって、なにげない暮しも深みを増したり、しっとりした手触りになったりする。さて、次は何に出会えるだろう。