最近ふと思い立って、ある映画を観なおしてみた。「バグダッド・カフェ(原題:Out of Rosenheim、英題:Bagdad Cafe)」、1987年の西ドイツ映画。人と人とがじわじわと心を通わせていく物語、そして自分という人間の再生の物語。若い頃に観たときは、主題歌の気怠さばかりが耳に残り、なんというか退屈な映画という印象だったのが、あれから30年近く経って観なおしてみると当時は気が付かなかった、ちょっとしたスパイスのような、絶妙な味わいを感じた。ていねいに観ていないとわからない、微妙な感情がさりげなく描かれていたり、地味な場面のはずがクスリと笑ってしまったり。
それが最近の作品であれ、ものすごく昔に作られた作品であれ、自分にとってその時観たいと思い浮かんだ一本というものはまっすぐに心の中に届いてくるものだ。人生の何場面かで味わってみると、受け取る物語が変わってくるかもしれない。さて、次は何を観ようか。昔、祖父の書棚にあった世界名作全集の中に見つけた壮大な物語。その映画を観たのはもう少し後のことだった。若い頃はスカーレット・オハラの強さに魅了され、彼女一辺倒だったが、今の自分にはどんな人物や場面が魅力的に映るだろうか。