うっすらと雪の積もる朝。よし、とヨーグルトババロアを作る。間近に迫ってきた年末年始の集まりに向けて、試作しようとここ何日か思いめぐらせていたもの。もう材料は揃えてあったのに、なかなか取り掛からずに数日経過。こういう場合、あとは私の気持ちが向くのを待つということになる。お菓子を作るということは、どんなものであっても私の場合、なかなかに集中力と勇気を要するから。
真っ白なお菓子が好きである。食いしん坊ゆえ、プリンや焼き菓子も好きなのだから、正確には、真っ白なお菓子「も」と言うべきか。それも冷やし固められた、ちょっと固めのぷりっとするデザートなどが大好きである。10代初めの頃、本で見かけたヨーグルトのムースを作ろうと思い立った。ころんとしたガラスのカップに、ふんわりぷるん、とおさまった真っ白なデザートが輝く写真は魅力的だった。当時お菓子作りの経験はほぼ無い。そんな時こそ基本に忠実にレシピ通りに作るのは大切なことなのに、ひとつひとつのプロセスもおおざっぱで、材料の分量も、甘さを控えめにしようなどと勝手にいじった記憶がある。そうしてできたものは、卵白とヨーグルトが分離した、目標からかけ離れた代物だった。当然試食した家族たちも、一口食べて黙り込んでいた。自分も黙り込んだ。こんな経験ばかりのお菓子作り黎明期。せめて経験から学べばいくらか上達したかもしれないのにそれもせず、苦い記憶だらけの時期である。農園のちっちゃなカフェで提供しているレアチーズケーキ。ちょっと固めのぷりっとする大好きなお菓子。これを作るたびにあの時の記憶が懐かしくよみがえる。