実家に顔を出した折、懐かしいものが目に留まった。それは数本のカセットテープ、私が引き出しにしまい込み、そのままになっていたもの。気づいたときに書類やら、食器やら、いろいろ整理をしているらしく、それらは「不用品」の箱の中に置かれていたのだった(持ち主は私なのだが)。
久しぶりに、本当に久しぶりに、デッキにカセットテープをセットしてみる。リチャード・クレイダーマンの旋律はどこまでも軽やかだ。とある美術館の特集番組を彩った、エンニオ・モリコーネの劇的でしっとりとした曲たち。情景が思い浮かぶような、いろいろなクラシック音楽が収まったものが2本。このうちの1本は、海外から親戚が一時帰国することになり、観光地を案内する父の車でのドライブ用にと選んだものだ。このあたりは小学校高学年から中学時代に聴いていたもの。それからモーツァルトだけをぎっしりと入れたものが2本。曲名を記したインデックスの筆跡からすると、高校時代に聴いていたものだ。あの頃、どんな毎日を送り、どんな考え事をしていた子供だったっけ?忘れてしまったことも、覚えていることも。数十年ぶりの自分との再会。あの頃の自分に、いろいろなことがあったけれど、音楽はあの後も私を支えてくれていたよ、と伝えたい。